浅見北斗 (Have a Nice Day!) インタビュー | 美しい衝動の瞬間が飛び交う“東京アンダーグラウンド”

2016.7.12


浅見北斗 (Have a Nice Day!) | 美しい衝動の瞬間が飛び交う東京アンダーグラウンド
浅見北斗 (Have a Nice Day!)

今回のインタビューはHave a Nice Day!の浅見北斗さん。ライブでは大のオトナ2人が踊り、歌い狂う。観衆もまた、彼らを応援するように、でも煽るように、暴れる。「暴れたい、殴りたい、ぶつかりたい」。決して一口に綺麗とはいえない欲望や衝動のぶつかりあいが美しい瞬間がある。そんな人間の愚かな純粋性を肯定するバンドHave a Nice Day!。彼らの音楽は、ロックからヒップホップ、R&B、ソウル、ポップ、ダンスミュージックにいたるまで、色んなジャンルが混ざっていて、聴く人を選ばない。彼らを表現するキーワードは、「ザワザワした東京」、「都会の気だるさ」、「夜の衝動と欲望」、「昼の抑圧感からの開放」、そしてそんな世界に生きる人々の“ドリームとロマンス”。

 

音楽的衝動の塊のような人間との出会い

——本日はよろしくお願いします。まず結成のきっかけを教えてください。

2011年から本格的にやってます。それまではサンプラー1台でラップというかほとんど即興みたいな感じであんまり曲もなかった。でも、ドラムを入れてちゃんとライブをやってこうってことでやりはじめて。今はもういないんですけど、左手でシンセを弾きつつ、右手でギターを弾けるすげー器用なやつがいて。そいつがけっこうちゃんと曲を作るような状態にしてくれた。それで『hello good music, hahaha…』っていうCD-Rの音源を、いちばん最初にまとめて作って。それが2011年の終わりで、ほぼ2012年かな。そっから新宿ロフト、下北沢Threeとかでライブをするようになってきた。

メンバーは2012年4月にギターがやめて入れ替わりでシンセを弾いていたさわさんが入ったんだけど、先日のO-WESTのワンマンで脱退して。ドラムはもともと叩いてくれていた島田と、内藤さんっていうボーカルというかダンサーみたいな人。最近はシンセに遊佐さん、あとギターのムツオくんって二人のサポートメンバーがいる感じで。あと俺がコンポーザーというか、録音はぜんぶ俺一人でやっていて、他のメンバーはライブメンバーという感じで。

——曲を作るのもおひとりですか?

そうそう。大体曲ができたら、スタジオにみんなで入って、こういう風に叩いてとか弾いてとか、大まかに言いながら、基本的には録音物どおりにやってもらうという感じ。

——メンバーと出会ったきっかけは何だったんですか?

ドラムの島田は、元々マリリンモンローズっていうバンドをやってたんだけど、そのバンドの活動が停滞してきちゃって、サポート的に叩いてもらってる。だいぶ長く、3〜4年ぐらいやってもらってるかな。遊佐さんは壊れかけのテープレコーダーズ、ムツオくんは天狗インベーダーズってそれぞれ彼らがやってるバンドをだいぶ前から知ってて、こっちから声をかけて手伝ってもらってる感じで。内藤さん、この人が一番変わってる方で、彼はいま46か47歳。俺が今年33歳なんで14個上くらい。チビデブメガネ三拍子そろった男で。

——なんだか興味深そうな方です。

めっちゃくちゃおもしろい人ですね。この人は元々、ライブハウスで1人即興ラップをしていた人で。ライブハウスで見かけて、「どうにもなってねえけど、めっちゃおもしろいな、この人何とかしてみたいな」と思って、バンドはまだできてなかった頃、俺もまだサンプラー1台で、ラップしたいけど、形になってないという時に声をかけて。「一緒にやろう」とは言ってないかな。その時はおもしろそうだなと思って話しかけて、仲良くなっていってだんだん遊んだりするようになって、自然に一緒にやるようになったって感じですね。

——友達みたいな感じからはじまったんですね。

うん。まあ14個上のおっさんなんすけど(笑)。

——内藤さんは曲作りには関わっていないんですか?

全くたずさわってないかな。でも、音楽がすげえ好きな人なんです。俺はあんま古い音楽は聴かないんだけど、ファンクやソウル、例えばマーヴィン・ゲイとかThe Parliaments、Funkadelicとかけっこう聴いてて教えてもらってた。普段もFOOTWORKとかマイケル・ジャクソンの映像みたり。

ある時、James Brownのドキュメンタリー映画「SOUL POWER」に一緒に行ったことがあって。短観映画だから、俺らが見に行ったころってもうお客さんそんなにいなくて、俺ら含めて10人もいない時だったんだ。それで内藤さんが映画中にすげえテンション上がって話しかけてくるわけ、いちいち「James Brownが――」とか。「ああそうなんすねー」とか聞きながら。

——敬語なんですね(笑)。

一応は年上だから(笑)。それで、James Brownのライブが映像で流れてきて、内藤さんがちょっとモゾモゾしはじめて。なんか楽しくなってきちゃったみたいで。

——衝動が(笑)。

そうそう、音楽的衝動がすごくたかまってきたみたいで。エンドロールの曲が流れるじゃないですか。そしたら、内藤さんそこで爆発しちゃって、立って歌いはじめちゃって!俺すごい驚いたんだけど、まわりのお客さんは、もっと驚くじゃないですか「え、何この人!」って。でもやっぱり内藤さんエネルギーがあるから「えっ!?」て思われつつも、結局なぜかみんなが「わぁっ!」って感動して拍手がおこって、最終的に内藤さんにみんなが握手を求めて帰っていく光景がくりひろげられて。内藤さんのライブが終わった、みたいな感じになって。「この人何なんだ?!でもこの人だったらあり得るか」と思った。そういう“持ってる男”なんです。

——ある種の魅力をすごくもった方なんですね。

「この人やっぱりすげえ面白いな」と思って、この人をリキッドルームのステージに立たせたいっていうのもあって、今までやってた。思い入れは内藤さんに対して強くあるかな。


浅見北斗 (Have a Nice Day!) | 美しい衝動の瞬間が飛び交う東京アンダーグラウンド

 

ライブハウスの温度感や自分たちのテンションを、ダイレクトにリリースへ

——クランドファンテイングを実施したきっかけは何だったんですか?

CDをリリースするということは、いま誰でもできるし、でも多分そのやり方はあわないのかなと。ハバナイのお客さんはライブハウスに来るお客さんだからね。例えば、タワーレコードに置いてもらって買ってもらうのも別にいいと思うんだけど。そうじゃなくて、CD販売からレコ発までが一緒になっていてもらいたいっていうのがすごくあって、どうしたらいいかなってすげえ考えて。CDがショップに置かれる、お客さんがそれを買いに行く、それでレコ発でライブの場所へ来てもらう、っていう流れの差がなんとなくすごいというか。

——3アクションありますからね。

俺たちがどんなにテンション高くやったとしても、CDショップで買った時のテンションと俺たちがやってるライブのテンションってぜんぜん温度差が違う。だから、ライブハウスの温度感、自分たちのやっていることのテンション感を“リリース”というものににダイレクトにもちこみたかったって、いうのがすげえある。クラウドファンディングでそれが可能になったかな。クラウドファンティングでCDをリリースするというのが最初のスタートラインで、そのCD販売で得た金額をレコ発にあてるっていう流れ。

——還元されていますね。

うん。すごいダイレクトな流れになってるから。そこにCDを流通するっていうことをかませないのが大事なのかなって。例えばbandcampも一応デジタルリリースだけど、bandcampでやると、レコ発に向かわせる1クッションがまた別に必要。でもクラウドファンティングならテキスト、CD販売が一緒で、なおかつ目標金額がわかりやすく出るから。たまたまそういうやり方がハバナイにめちゃくちゃ合ったという感じ。

——ファンがCDを買ったらそのままライブに行けるっていう仕組みは良いですね。

あ、クラウドファンディングやった理由もうひとつ。実は俺、もともとクラウドファンティングっていうシステムにすごい嫌悪感があって。

——嫌悪感ですか。

例えば、「音源を作りたいからお金を出してください」っていうのをやってる連中がいて。「100万円欲しい」と。そこに、リターンとしてメンバーとバーベキューに行けるとか、メンバー手作りの何かがもらえるとか書いてあって。

——若干、接触ビジネス的な雰囲気がありますね。

そうそう。俺これに対して「なんだよ!」と思って。「このキャバクラみたいなシステム、すげー気持ち悪いな」って。こういうのが嫌だったからこそ、そういうシステム化を逆転させたいなと思った。だから、まず音源はクラウドファンディングで失敗してもしなくても100%必ずみんなにあげる。買ってくれた時点で音源はデータで渡しちゃうんですよ。1,500円払ってくれた人にはデータ、5,000円払ってくれた人にはデータと盤。後者の方は成功したから当日渡せたけど、もし成功しなくても支払ってくれた本人には送るか渡すかしようと思っていて。なんかその、インターネットの使い方を面白くない方向にもっていってるやつらいっぱいいるなと思って。

そういうのをある種バカにしたかったっていうか。そいつらがすげえクソみたいに見えるなって思えるやり方で。俺がクラウドファンディングやってよかったなって思うのは、「クラウドファンティングっていうものに対して気持ち悪いと思っていたけど、Have a Nice Day!のやり方はカッコいい」って言ってくれる奴がいたこと。そういうことをネットで言っている人がいるってことは、みんなさっき言ったキャバクラみたいなクラウドファンティングは気持ち悪いって、実際にみんな思っていたんだなっていうことが浮き彫りになってよかったな。

——TuneCore Japanは使ってみてどうですか?

前、普通にiTunesに登録しようとして、すごく大変でしんどくて二度とやりたくないと思ったけど、TuneCoreだとすぐにできたから、こんな簡単な方法あるんだと思ってビックリ。ぜひみんな使ったほうがいいよって思った。それこそ、TuneCoreやクラウドファンディング、Twitterの登場で、本当はオルタナとかインディーズで自分たちだけでやると大変なことが、だんだん楽になってきてるんだよね。でも意外とみんなが使ってない。新しいことをしないとダメだと思うな。

そういえば、アメリカだとバンドの需要っていま無いらしいですよ。バンド活動自体が重くなっていて。曲作り、録音でいっぱいいっぱいで新しいことを試す余裕が無いんだろうと思う。

——更新頻度が遅くなりますよね。

打ち込みだとサウンドクラウドが使いやすいし、どんどん曲をあげることができるけど、バンドでは大変でできない。アルバム1枚作るのに100万~150万円するのに、結局回収できないみたいな。そういう人たちはやっぱり回収したいから一番利率の良い方法ということでCDで売りたいんだろうね。iTunes、bandcampも手数料が売り上げから引かれちゃうから。そういうのがみんな嫌でデジタルにあげないんだろうけど。ハバナイはバンドだけど、自分の判断でやってるんで、どんどんあげていけるからそういう点はよかったかな。

 

LIQUIDROOMは無理だろうなと思いつつも、埋められなくはないっていう

——LIQUIDROOMでライブをすることは、Have a Nice Day!にとってどういう意味合いがありましたか?

LIQUIDROOMっていうのは、メジャーの後ろだてがほぼつかない、自分たちでやれる限界ギリギリのハコなのかなって。多分そこから先、赤坂BLITZや新木場 Studio Coastだとさすがにイベンターをいれないとキツい。LIQUIDROOMのライブはイベンターもいれてなくて、完全に自分たちだけでやったんだよね。LIQUIDROOMは単純に自分の中で思い入れの強いハコだし。例えばATARI TEENAGE RIOTやTHA BLUE HERB、Autechreを見に行ったのもLIQUIDROOMだった。あと、赤坂BLITZクラスまでいくと、やっぱり業界の匂いがするから。俺らが憧れてた2000年代の音楽、アンダーグラウンドな音楽をできる限界がLIQUIDROOMなのかなって。

——そういったボーダーラインがLIQUIDROOMだと。

その時点では、みんながLIQUIDROOMはある種ムリだろうなと思いつつも、一方で埋められなくはないっていう可能性を十分に持っていたから。WWWだったら埋まるだろうし。まあWWWをマックスに埋めたこともなかったけど、それはまわりのバンドがすでにやっていること。LIQUIDROOMはまだ当時やってなかったから。そこまで追い込まないと意味ないし、物語性も生まれないから。あとやっぱり内藤さんをLIQUIDROOMのステージに立たせてみたいっていう個人的な欲望(笑)。

——立たせてみてどうでしたか?(笑)

やっぱり絵になる男だなと思った。俺、昨日幕張メッセにPerfumeのライブを観に行って、3万人の観衆がいて「うぉ」って思ったけど、やっぱこのステージにはPerfumeより内藤さんの方があうんじゃないかと思ったぐらい。

——なんだか、映えそうですよね。

Perfumeも確かにかっこいいけど、それはもう普通だから。ステージに立ってることに違和感がない。内藤さんだと違和感ありすぎて、だからこそおもしろくなる。そういう人が立つべきなんじゃないかなって。だから次はやっぱり幕張メッセかなと(笑)。内藤さんとPerfumeの共演、超現実な感じがするよ。そういうのを観たい。



 

「ドリームとロマンスを取り戻す」みたいなことを口にした瞬間、みんなが本当に使いはじめる

——ハバナイって昼間の正気よりも真夜中に聴いたほうがなんだか心にくるんですよね。

まあ、酔っぱらってもらいたいかな。ライブハウスはある種危険な場所であってもらいたいというか。もちろん、痴漢とかはあってはならないと思うけど。ライブハウスは外の世界と衝突する瞬間じゃないですか。単純にCDを聴いているときとは違う。現実との衝突って、生きていく上で大事だし。例えば人に暴力を振るいたいというある種ネガティブな欲望をむき出しにしている瞬間が美しかったりする。そういうむき出しの人間が美しいし、面白い。

——刹那的だからこそ美しいというのはありますね。

お客さんを見てて思うけど、俺の発言に対してめちゃくちゃピュアに信じるから。「東京アンダーグラウンド」って言いだした瞬間に、みんなそれが本当に存在するような空気感でその言葉を言いはじめる。言葉の力ってすげえなと思う。例えば、「ドリームとロマンスを取り戻す」みたいなことを口にした瞬間に、みんながそれを本当に使いはじめるんだよね。

——その言葉に現実性があるかどうか、ということではないんですよね。

そうそう。みんなのもつ“信じる力”や“純粋さ”の強さなのかな。

——なんとなく言語化できなかった気持ちを代弁してくれていると感じているのかもしれませんね。

手が届かなかった、言語化できなかった、そういった部分を言葉にしていきたかった。だからこそ、ちょっときわどい部分もあるかな。言葉の意味をみんなが勘違いしていることもあるから。例えば、オレが口にする「東京アンダーグラウンド」って言葉はほんとうのところはハバナイにしか当てはまらないような気がする。ハバナイの周辺っていう意味ではNATURE DANGER GANGやおやすみホログラムにも当てはまるかもしれないけど。

——他グループは違いますか?

ネイチャーやおやホロはアンダーグラウンドの特性はそれほど感じないかな。メジャーってフォーマットでも十分に成立すると思うから。ネイチャーは放送コードって問題があるけど(笑)。あとライブに関して言えば、彼らは東京じゃなくてもよかったと言えなくもないけど、まぁなんとも言えないな(笑)。

——いずれにせよハバナイは東京じゃないとだめな感じはします。

多分ネイチャーやおやホロのほうがわかりやすいしキャッチ―だと思うんだ。東京じゃない場所で見ても伝わるんじゃないかなって。

——ある意味、普遍的という感じですか。

そうそう。ネイチャーやおやホロのライブ映像は地方で見てもしっくりくるけど、ハバナイはわからないというか。ネイチャーのメンバーに島田ボーイっていうのがいて、彼がツアーで地方に行ったときに、地方でハバナイの音源を聴いてても全然ピンとこなかったんだって。でも移動でだんだん東京に近づくにつれて、すげえしっくり聴こえるうになったって言ってて。

だから、おそらくハバナイの音楽は東京にいないと感じられない要素を内包したものなのかなと思う。少なくともライブに関しては、すごいそれがあるんだと思うんだよね。ネイチャーやおやホロのほうが広がりやすいし、分かりやすいとは思う。まぁ要約するとハバナイは地方に死ぬほど弱い(笑)。これは由々しき問題ですよ(笑)。

 

「もっと上にいかなきゃ」

——全国へ広めていくことに関しては、どのように考えていますか?

広がりたいっていうか、より拡張していきたいというのはめちゃくちゃあるね。かと言って、それがみんなの目指してることの“売れる”という意味ではないのかなって思う。もちろん“アンダーグラウンド”や“オルタナ”みたいな言葉を伴って、デカくなっていきたいし。“インディーロック”という言葉が、売れてる売れてないの“売れてないバンド”っていう定義として見てる人はやっぱりいて。“アンダーグラウンド=売れないバンド”と思っている人にそう思われることは別にいいんだけど、単純に事実としてその状態を超えてみたい。

でもそれってやっぱり、自分たちが巨大な存在にならないと事実として残らないというか。「言葉で説明してみろよ」と言われた時に、説明できる術がない。それをいかにして説明できるところにまで持っていくかどうか、みたいなことが大事だと思ったな。

——だからこそのLIQUIDROOMでのライブでもあったんですね。

そう。でもLIQUIDROOMが終わって「これくらいじゃだめだな」って思った。マジでぜんぜんだめ。当日も、まだお客さん入場前のLIQUIDROOMを見たときに「こんな狭いんだ!」と思ってびっくりした。

——意外と小さくて?

意外とどころじゃないよ。やる前は、頭の中では超デカいハコだったけど「めちゃくちゃせまい!」と思って(笑)。実際、LIQUIDROOMやったあとも状況はほとんど変わらなかったから。「変わらないだろうな」とは思ってたけど、当日ハコのサイズを実感して、「やっぱりここでやっても変わんないから、もっと上にいかなきゃな」ということはすげえ思った。「もっとなんかしなきゃな」と。

——変化はなかったんですね。

そうだね。世界はそんなに劇的には変化しなかったかな。 

——やっぱ幕張ですかね(笑)。

3万人を埋めたらもしかしたらちょっと変わるかもしれない(笑)。

 

生きている人間の魂でしかないものを表現できるのが音楽の力だと思う

——映画『モッシュピット』についてはどうですか?

2015年11月18日、半年前のことだから今見ると稚拙な感じもするかな。でも、あれを見て我々に興味を持ってくれた人もいるから、分かりづらさみたいなものを解消してくれた部分もある。逆に、見てもっとわかんなくなったっていう人もいるだろうけどね(笑)。あくまで映画は自分たちの作品ではないから、あれはあれで楽しめたらって感じかな。監督してくれた岩淵くんが「Blood on the mosh pit」のPVも作ってくれてて、一緒に作業もしてるから、俺はあの時のテンション感の方がどちらかというと、緊張感があった。あの曲がLIQUIDROOMに向かうっていう流れの緊迫感があったから。映画だとやっぱりどうしても後日談じゃないけど、過去のことだから。

——記録という感じでしょうか?

うん、そうだね。見た人の中で、ライブを知らないとわかんないかもって言ってる人が多かったけど、映画を見て好きになった人もかなりいたみたいだし。そういう意味では、ライブに来ない人があの映画を観てピンと来る。それで、ライブに見に来てくれる。もしくは映画として楽しんでくれるとしたら、それはすげえいいのかなと思う。だから単に映画ともまた違うのかな。今度WWWで、映画の上映をした後にライブをするっていうのがあって、そのセットで見た方がこの映画は正しいような気がする。

——そこではじめて感じれるものもありそうですね。

そういう熱量が確かなものなのかどうかみたいなのを見にくるというか。最初の段階では、プロローグで40分くらいの動画をYouTubeに流したけど、そういうのも面白いのかなって思っていて。映画が映画館で完結するものではなくなる。例えば、ハバナイの音楽もLIQUIDROOMのクラウドファンディングも、その流れの中で面白いことが起きていたから。クラウドファンディングも、ライブハウスで始まって終わっていたかというとそうではなくて、その前段階のネット上の動きだったり、「Blood on the mosh pit」のPVだったり、DOMMUNEだったり。そういう流れの面白さ。あの映画も多分映画館で見て映画だけで完結ということよりも、ネットやライブだったりでの全体で完成というような気もする。難しいんだけどね。本当に映画が好きな人にとっては逆にイヤなものだったかもしれない。

——クリエイティブ全体でコンテクストやストーリーをつないでいくと、思い入れも違ってくると思います。

俺らからしたら、映画は客観的に見れなくてヒヤヒヤするけどね(笑)。「うぉ、また映った!」みたいな。映画って感じじゃないね。結婚式のビデオみたいな感じかな。つらくもあり、色々な気持ちがこみ上げるものがある。音楽だけじゃなくライブにとっても、インターネットってすごく重要で。新しいものはインターネットにすげえ落ちてるから。ネットだけじゃないけど、PVとかクラウドファンティングとかサウンドクラウド、bandcampもぜんぶ結局ネットに上がっているもので、映画もネットから逃れられないんじゃないかと思う。そういう意味では、ネットにしか公開されない映画もあっていいと思うんだけど。それは映画と言えるかどうかわかんないけど(笑)。

——映画でも分かりますが、改めてハバナイのファンは熱いですよね。

そうそう、みんなアホだからね(笑)。

——ライブ映像を見ていると、だいたい男の人がワーッと暴れている感じで(笑)。

自分の原風景はああいうものなんだよね。例えば、高校のときに行ったマリリン・マンソンのライブとか。本当にケガするんじゃないかと身の危険を感じながら見るっていうものが人生で見た最初のライブだったから、すげえ強烈に残っていて。モッシュやダイブがあって、お客さんに熱量がある、昔あったフェスの「RAW LIFE」とかの雰囲気。だんだんライブは、見て楽しむという方向になってきた。それはそれでいいと思うけど、俺はもっとフィジカルなものというか生きていることと直結しているようなライブが見たい。だから、Perfumeはすげえよかったけど、生きるエネルギーそのものを見せつけられているかっていうとそこまでの感動はなかった。あれはあれで、素晴らしいと思うけど、自分たちがやることはそういうことじゃないんじゃないかと思って。ハバナイを見に来ている人も、曲を聴きたいというよりも体感したいっていう人が多いんじゃないかな。感じたいとか暴れたいとかの衝動が強いというか。


浅見北斗 (Have a Nice Day!) | 美しい衝動の瞬間が飛び交う東京アンダーグラウンド

——オシャレでポップな、暴れない系のライブについてはどう思いますか?

それは否定するつもりはないというか、求めるものが違うと思う。例えば、Perfumeのライブに行って、手をあげてピョンピョンできるか否かの自意識の違いというか。俺はできない(笑)。むしろライブ行って暴れる方が自意識のハードルが低くて、静かに聞くとかみんなが手をあげたらあげるとかの方がハードル高いんだよね。「これ、俺、絶対できない」って固まる。「お、マジここの3万人、勇気があるな」と思う(笑)。そっちの方が怖い。もっと言うと、物足りなさ。大衆が支持するアーティストでも、それがマイケル・ジャクソンとかレディ・ガガみたいなレベルだったらまた違うと思うけど。レディ・ガガなんて俺の友達が見に行って一曲も知らないのに大泣きして。すげえ好きで全曲知っているグライムスでは泣かないのに一曲も知らないレディ・ガガで泣いてしまったっていう。「レディ・ガガ、生命力すげえ!」ってその話聞いて感動した。

——ハバナイの目指すところはこういった、生命力のあるライブですか?

エネルギーや、人のむき出しの衝動みたいなものの表現が目指すところかな。俺、ルーツとしてブルーハーツがすげえ好きで。歌も演奏もすげーシンプルだし、演奏も高校生だったら余裕で弾けるレベルで簡単なのに、すげえオリジナリティがあって。カラオケとかで歌の上手い人がブルーハーツを歌うとスカスカに聞こえる。
そういうブルーハーツみたいな、生きている人間の魂でしかないものを表現できるのが音楽の力だと思うし、そういうものを目指したい。目指しつつ、世の中と折り合いをつけていきたい(笑)。


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写真:岩澤高雄

この記事の執筆者

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TuneCore Japan 公認 学生アンバサダー

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